どくたまの独り言 Part2

どくたまによる、どくたまのための、徒然なる独り言。

『山寺の和尚さん』の歴史

訳あって、童謡『山寺の和尚さん』のことを、ちょっと調べたので。
自分用のメモというか備忘録として記載。

きっかけは『山寺の和尚さん』の歌詞って、猫イジメじゃないの?という、某ラジオ番組での放送。
もとが童謡だし、なにかいわれがあるだろうと、ちょと調べてみた。

太田信一郎著『童謡を訪ねて』(ISBN-13: 978-4938607586)や、
尾原昭夫著『日本のわらべうた』(ISBN-13:978-4861454035)によると。

この『山寺の和尚さん』は、もともと江戸時代の手まり歌、『ぽんにゃん節』がベースになっていて。
この『ぽんにゃん節』が、各地に広まる中で、色々と歌詞の派生があったようだ。
例えば、
『山寺のぉ、和尚さんは、猫がお好きで、猫をかんぶくろ(紙袋)へ押し込んで、ちょいと押しゃ、ニャンと鳴く、おニャンニャンニャンニャンと鳴く、まずまず一貫貸しましたぁ』
とか、
『ひとり坊さんさみしかろ、猫をかんぶくろ(紙袋)へおっぺしこんで、ポポポンポンと突きゃ、おニャンニャンニャンと鳴く、まずまず一貫貸し申した』
など、元歌の多くは、袋に入れた猫を、チョンチョンと突く、押す程度の物であったようだ。

これが、現代に伝わるような歌になったのには、明治期の上方の落語家、『桂しん吾(新吾)』が関係している。

桂しん吾は、桂文枝、もしくは二世 曽呂利新左エ門(にせ そろりしんざえもん)の弟子と言われていて。明治20年ころに、上方で活躍した、噺の他、甚句などの唄が上手い、人気のある噺家であったようす。
この桂しん吾が、『ぽんにゃん節』をベースに歌詞を改作し、歌舞伎役者の様な声色で
『山寺の和尚さんは、鞠は蹴りたり鞠はなし、猫を茶ン袋にどし込んで、ポント蹴りゃ、ニャンと啼く、ニャンニャンと啼くきゃ山寺の・・・』
と、新京極の寄席で唄ったのがウケて。他の噺家が、これを真似たり、レコードになったりしたのが、世に広まるきっかけだとされている。
その後、『オトナの戯れ歌』としてこの歌が歌い継がれ。
昭和12年に『和製ジャズ』として、中野リズムボーイズが歌いレコード化された『山寺の和尚さん』(作詞:久保田宵二、作曲:服部良一)が大ヒット。
これが後に童謡として歌われるようになった、、、というのが、『山寺の和尚さん』の真相のようだ。

だから、元をたどれば。
和尚さんと猫が、ツンツンつつき合う、なんとも微笑ましい姿の唄が。
オトナの戯れ唄、ジャズとして発展する中で、歌詞が変遷していった。。。
そんなところに、この歌が、童謡らしからぬ所以があるようだ。
と、ここまで調べて。フムフムなのである。