どくたまの独り言 Part2

どくたまによる、どくたまのための、徒然なる独り言。

患者の暴力

医療、介護の現場では、日常茶飯事なのが、患者の暴力。

いわゆる悪態、暴言という無形のモノもあれば。

本当に叩く、殴る、蹴るという有形の物まで。

相手が患者だけに、医師も、看護師も、その他の職種も、強く出られない。

言い方は悪いが、そういう立場を悪用しているとも言えなくはない、そんな暴力は日常茶飯事。

 

無論、故意にやっている人も居れば。

いわゆる認知症。昔風に言えばボケて、そういう行為に及ぶ人もいる。

 

先日の当直中。

『病棟で暴れている人が居て、手が付けられない。先生早く来て。』

というSOSが来て、行ってみると。

入院患者が確かに病棟で大暴れ。

 

委細は書けないが

『俺は帰る、退院する』

と言ってきかない。

 

ホテルなら、はいどうぞ、お帰り下さいで済むが。

病院で、入院患者の場合、そうはいかない。

 

いわゆる医療における行為というのは、一般に医療契約(準委任契約)による行為と考えられている。

すごく簡潔に言えば、

『直して頂戴』と委任されて、『最善を尽くします』という行為。

だから、結果的に治らなくても、責任はない(ただし、一般的な医療水準に乗っとる必要はある)し、患者の方にもそのための責任(例えば、ちゃんと通院するとか、医師の指示に従うとか、)が必要。

そして、そういう治療行為の中で、色々不測の事態が起こる。それに適宜対処していって、、、というのが医療契約なので。

医療契約は、よく農業に例えられる。

農家さんが、どんなに頑張って最善を尽くしても、風水害に遭ったり、猛暑や冷夏の影響を受けたりして、思うような収量を得られない。これは別に農家の怠惰ではなく、避けられない「仕方のない」事だが。

 

だから、よく勘違いされるのが『請負契約』で。

これは例えば『家を建てて』と頼まれて『最善を尽くします』ではダメ。

『頑張ったけど、雨漏りする家しか出来ませんでした』

では契約不履行になる。ちゃんとした家を立てねば、契約不履行なのだ。

医療をこの『請負契約』と勘違いされることが実に多いが、どんなに最善尽くしても、予期せぬことがある。それが人という生き物を相手にしている医療。

 

ちょっと脇道にそれたが、そういう契約が医療なので、俺は帰ると言われて、はいどうぞとは言えないのが医療。治療として必要だから入院しているので、そういう契約である以上、帰ると言われても、どうぞとは言えない。

(だから、これもよく誤解されている。『俺が入院したんだから、退院するのも俺の勝手』とよく言われるが、契約上、そういう訳にはいかない。こっちにも委任された以上、診る義務がある)

 

が、この患者は違った。

説明しても、、、聞かない。

殴る、蹴る、騒ぐの暴行。

そして、実際、僕は患者に噛みつかれて、怪我をした。

 

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噛みつかれた手首。皮膚が裂けて怪我してる。

こうなると、双方の信頼が完全に損なわれる状況。

そもそも、その他の入院患者さんの安全も保てるかが怪しい。

こういう場合は、契約の解除になる。

 

そして、本来ならこういう場合、身体を故意に刺傷されたわけだから、傷害行為として警察に通報したっていいんだが。

 

実際の医療現場で、コレがされることは、ほぼ皆無。

『かまれる方が悪い』とか『プロ意識が足りない』とか言われて、患者のやったことだから仕方ないとうやむやにされる。

仮に、警察に通報すると、

『あの病院は、何かするとすぐに警察を呼ばれる病院だ』

という風評が立つので、現実的に無理、というのが、医療介護現場の悲しい事実。

 

誰かに噛みつかれて怪我した時に、警察を呼べないってオカシイ。

 

日本の医療介護の現場は、日々そういう患者の暴力に、疲弊しているのである。